Kei Narujima から移行しました。
本シリーズの目的は、専門的な会計税務の日本語文章を「正確に訳すためのこつやプロセス(リサーチの仕方、単語の選び方等)」を「文書化」し、多くの方とシェアすることです。私は長年、金融翻訳、特に会計税務の翻訳に携わってきました。米国公認会計士(US CPA)試験の全科目に合格しています。ただ、実務には携わってはおりません。また帰国子女でもなく、留学の経験もありません。
初回(第1回)から国税庁の事前照会「英国子会社がオランダ法人と行う合併の取扱いについて」を翻訳しています。
日本語原文
英国子会社がオランダ法人と行う合併の取扱いについて
事前照会に係る取引等の事実関係
本件合併に係る事実関係は以下のとおりです。なお、合併期日は2019年3月29日よりも前になる予定です。
① A社がオランダにC社を設立する。
② C社を合併法人、B社を被合併法人とする本件合併を行う。
③ 本件合併に伴い、B社の株主であるA社に対してはC社株式以外の資産は交付されない。
④ 本件合併により、B社の合併直前の資産及び負債の全てをC社が引き継ぐ。
⑤ A社は本件合併後においてC社の発行済株式の全てを継続して保有する見込みである。
⑥ 本件合併は、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56EC指令(※1)を受けた現地国法令である英国及びオランダの各国内実施法(※2)を準拠法として行われる。
(※1)Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
(※2)英国:The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
オランダ:Dutch Civil Code(Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross-border mergers)
Facts and assumptions
Facts and assumptions this advance ruling is based upon are described below. The Merger is expected to take place before March 29, 2019.
① The Japanese company establishes a company in the Netherlands.
② The UK company merges into the Dutch company.
③ In the Merger, no assets other than shares in the Dutch company are distributed to the Japanese company (i.e., the shareholder of the UK company).
④ In the Merger, all the assets and liabilities of the UK company immediately before the Merger are transferred to the Dutch company.
⑤ The Japanese company is expected to continue to own the issued shares of the Dutch company after the Merger.
⑥ The Merger is governed by the relevant UK and Dutch regulations.* There regulations implement Directive 2005/56/EC.**
* UK: The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
Netherlands: Dutch Civil Code (Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross- border mergers)
** Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
前回の続きです。
日本語原文
④ 本件合併により、B社の合併直前の資産及び負債の全てをC社が引き継ぐ。
⑤ A社は本件合併後においてC社の発行済株式の全てを継続して保有する見込みである。
Sample translation
直前は「immediately before」です。直後は「immediately after」です。直前の事業年度は「immediately preceding fiscal year」と言えます。
(2) 引き継ぐ
take over でも間違ってはいませんが、こういう場合、よくtransfer が使われます。ちなみに譲渡法人は transferring company / transferor、譲受法人は transferee company / transferee と言います。
(3) 発行済株式
自己株式が除かれている場合と、そうでない場合があり、要注意です。元の法令を調べて、自己株式が含まれている場合は「issued shares」、そうでない場合は「outstanding shares」とします。詳しくは第1回をご覧ください。
(4) 見込みである
税務の世界で「見込みがある」かないかは重要です。どういう風に重要かと言いますと。。。
B社がC社に合併されても、究極的な支配者がA社であるという組織構造に変わりはないと「見込んでいる」ので、課税は「合併時」ではなく、「実質的に資産及び負債がグループ外に移転する時」まで延期することを認めてよ、という趣旨なので重要なのです。
「見込んでいない」場合、つまりC社の株式をA社に譲渡せずに売却することを見込んでいる場合、譲渡益に対する課税の延期は認められません。税務上の適格不適格の判定によく出てきます。
⑥ 本件合併は、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56EC指令(※1)を受けた現地国法令である英国及びオランダの各国内実施法(※2)を準拠法として行われる。
(※1)Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
(※2)英国:The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
オランダ:Dutch Civil Code(Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross-border mergers)
Sample translation
⑥ The Merger is governed by the relevant UK and Dutch regulations.* These regulations implement Directive 2005/56/EC.**
* UK: The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
Netherlands: Dutch Civil Code (Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross- border mergers)
** Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
(5) 準拠法として行われる
「本件合併は。。。。現地国法令。。。。を準拠法とする」と言い換えてから訳します。「準拠」は govern で、「準拠法とする」は「is governed by ~法」と言います。契約書などにも「本契約は~法に準拠し、~法に従って解釈されるものとする(is governed by and shall be interpreted in accordance with the laws of ~」とあります。
事前照会に係る取引等の事実関係
本件合併に係る事実関係は以下のとおりです。なお、合併期日は2019年3月29日よりも前になる予定です。
① A社がオランダにC社を設立する。
② C社を合併法人、B社を被合併法人とする本件合併を行う。
③ 本件合併に伴い、B社の株主であるA社に対してはC社株式以外の資産は交付されない。
④ 本件合併により、B社の合併直前の資産及び負債の全てをC社が引き継ぐ。
⑤ A社は本件合併後においてC社の発行済株式の全てを継続して保有する見込みである。
⑥ 本件合併は、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56EC指令(※1)を受けた現地国法令である英国及びオランダの各国内実施法(※2)を準拠法として行われる。
(※1)Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
(※2)英国:The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
オランダ:Dutch Civil Code(Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross-border mergers)
Sample translation
Facts and assumptions
Facts and assumptions this advance ruling is based upon are described below. The Merger is expected to take place before March 29, 2019.
① The Japanese company establishes a company in the Netherlands.
② The UK company merges into the Dutch company.
③ In the Merger, no assets other than shares in the Dutch company are distributed to the Japanese company (i.e., the shareholder of the UK company).
④ In the Merger, all the assets and liabilities of the UK company immediately before the Merger are transferred to the Dutch company.
⑤ The Japanese company is expected to continue to own the issued shares of the Dutch company after the Merger.
⑥ The Merger is governed by the relevant UK and Dutch regulations.* There regulations implement Directive 2005/56/EC.**
* UK: The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
Netherlands: Dutch Civil Code (Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross- border mergers)
** Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
前回の続きです。
日本語原文
④ 本件合併により、B社の合併直前の資産及び負債の全てをC社が引き継ぐ。
⑤ A社は本件合併後においてC社の発行済株式の全てを継続して保有する見込みである。
Sample translation
④ In the Merger, all the assets and liabilities of the UK company immediately before the Merger are transferred to the Dutch company.
⑤ The Japanese company is expected to continue to own the issued shares of the Dutch company after the Merger.
⑤ The Japanese company is expected to continue to own the issued shares of the Dutch company after the Merger.
直前は「immediately before」です。直後は「immediately after」です。直前の事業年度は「immediately preceding fiscal year」と言えます。
(2) 引き継ぐ
take over でも間違ってはいませんが、こういう場合、よくtransfer が使われます。ちなみに譲渡法人は transferring company / transferor、譲受法人は transferee company / transferee と言います。
(3) 発行済株式
自己株式が除かれている場合と、そうでない場合があり、要注意です。元の法令を調べて、自己株式が含まれている場合は「issued shares」、そうでない場合は「outstanding shares」とします。詳しくは第1回をご覧ください。
(4) 見込みである
税務の世界で「見込みがある」かないかは重要です。どういう風に重要かと言いますと。。。
「見込んでいない」場合、つまりC社の株式をA社に譲渡せずに売却することを見込んでいる場合、譲渡益に対する課税の延期は認められません。税務上の適格不適格の判定によく出てきます。
日本語原文続き
⑥ 本件合併は、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56EC指令(※1)を受けた現地国法令である英国及びオランダの各国内実施法(※2)を準拠法として行われる。
(※1)Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
(※2)英国:The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
オランダ:Dutch Civil Code(Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross-border mergers)
Sample translation
⑥ The Merger is governed by the relevant UK and Dutch regulations.* These regulations implement Directive 2005/56/EC.**
* UK: The Companies(Cross-border Mergers)Regulations 2007
Netherlands: Dutch Civil Code (Section 2.7.3A Special statutory provisions for cross- border mergers)
** Directive 2005/56/EC of the European Parliament and of the Council of 26 October 2005 on cross-border mergers of limited liability companies
「本件合併は。。。。現地国法令。。。。を準拠法とする」と言い換えてから訳します。「準拠」は govern で、「準拠法とする」は「is governed by ~法」と言います。契約書などにも「本契約は~法に準拠し、~法に従って解釈されるものとする(is governed by and shall be interpreted in accordance with the laws of ~」とあります。
(6) 指令を受けた現地国法令である
最初、「指令を受けた」の意味が分かりませんでした。分からない時は調べます。調べているうちに英国政府のこのサイト(冒頭部分)に行き着きました。
These Regulations* implement Directive 2005/56/EC on cross-border mergers of limited liability companies.... (Narujima 傍線)
* The Companies (Cross-Border Mergers) Regulations 2007
「These Regulations(つまり英国現地法令)がこの指令を実施している」という意味ですので、以下のように言い換えました。
本件合併は、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56/EC指令を受けた現地国法令である英国及びオランダの各国内実施法を準拠法として行われる。
→ 本件合併は、英国及びオランダの各国内実施法を準拠法として行われる。これらの国内準拠法が、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56/EC指令を実施している。
海外の言葉が日本語に訳され、その日本語をまた英語に訳し戻すときは必ず出典に当たる必要があります。
These Regulations* implement Directive 2005/56/EC on cross-border mergers of limited liability companies.... (Narujima 傍線)
* The Companies (Cross-Border Mergers) Regulations 2007
「These Regulations(つまり英国現地法令)がこの指令を実施している」という意味ですので、以下のように言い換えました。
本件合併は、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56/EC指令を受けた現地国法令である英国及びオランダの各国内実施法を準拠法として行われる。
→ 本件合併は、英国及びオランダの各国内実施法を準拠法として行われる。これらの国内準拠法が、EU域内の異なる国に所在する会社間での合併を司る欧州議会及び欧州理事会2005/56/EC指令を実施している。
海外の言葉が日本語に訳され、その日本語をまた英語に訳し戻すときは必ず出典に当たる必要があります。
Sample translationは「正解」ではありません。ここに書かれていることは全て私見であり、誤訳が含まれている可能性があることを予めご了承ください。ご質問、ご意見等ありましたら遠慮なくコメントいただければ幸いです。本シリーズを通じていろいろな方と交流できることを心より願っております。
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