2023-10-20

金融翻訳のこつ 適格合併 No.6

Kei Narujima から移行しました。

本シリーズの目的は、専門的な会計税務の日本語文章を「正確に訳すためのこつやプロセス(リサーチの仕方、単語の選び方等)」を「文書化」し、多くの方とシェアすることです。私は長年、金融翻訳、特に会計税務の翻訳に携わってきました。米国公認会計士(US CPA)試験の全科目に合格しています。ただ、実務には携わってはおりません。また帰国子女でもなく、留学の経験もありません。

初回(第1回)から国税庁の事前照会「英国子会社がオランダ法人と行う合併の取扱いについて」を翻訳しています。今日は6回目です。

日本語原文

(1) 関係法令
イ 適格合併について
 合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、合併後に同一の者と合併法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合の合併で、被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないものは適格合併に該当することとされています(法人税法第2条第12号の8、法人税法施行令第4条の3第2項第2号)。

Sample translation

(1) Relevant laws
A. Tax-qualified merger
If the surviving company and the disappearing company in a merger are fully controlled by a single person before the merger and are expected to continue to be fully controlled by that person after that merger, the merger is tax-qualified provided that no assets other than shares in either the surviving company or its parent company are distributed to the shareholders of the disappearing company. (CTL 2(xii-viii), CTL Enforcement Order 4-3(2)(ii))

(1) 関係法令

「applicable law」というのが「適用法令」という意味でよく使われますが、「関係法令」はそれより意味が広いので「relevant」を使いました。

(2) 被合併法人と合併法人

色々な言い方があります。
被合併法人 disappearing company、merged company, acquired company 等々
合併法人 surviving company、merging company, acquiring company 等々

(3) 同一の者

same を使いたくなりますが、要は「単一」の者に両方が支配されているという意味だと理解し、「a single person」としました。「者」は「もの」ではなく「しゃ」と読み、個人も法人も両方含みます。実は「person」も両方含むのですが、ネイティブでも法律の知識がない人の中には、person を個人だけと誤解する人がいます。(結構多いです!)

(4) 完全支配関係

fully controlling relationship と訳されたりします。ただ、

AとBの間に支配関係がある 
✖ Fully controlling relationship exists between A and B.
✖ There is fully controlling relationship between A and B.
と書くより、

AがBを支配している / BがAに支配されている 
〇 A fully controls B.
〇 B is fully controlled by A.
の方がすっきりしていますので上のようにしました。合併(第1回をご覧ください)と同様です。

(5) 株式又は出資

shares or capital contribution と言いますが、shares だけになることが多いです。つまり、shares or capital contribution と訳してもネイティブがチェックする時点でかなりの率で「or capital contribution」は削除されます。この場合も省略しました。

(6) 被合併法人の株主等

日本人の大好きな「等」!です。「等」で心がけることはとにもかくにも「etc」 などを使わないで書くようにする」ということです。ネイティブは「etc」を嫌います。「株主等」の意味を調べたところ、法人税法第2条第14号に以下のように定義されていました。

十四 株主等 株主又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員その他法人の出資者をいう。

「株主」だけではなく、「合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員」も含むことが分かりました。この「社員」は「従業員」ではなく、「合名会社、合資会社若しくは合同会社の出資者」という意味です。(5)の「株式又は出資」に対応しているわけです。

ただ、「合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員」を一語で表す英語がない。。。合名会社、合資会社若しくは合同会社を定義するところまで深入りしたくない。。。そして、「shareholders(stockholders もOK)and partners/members」 と書けなくもないのですがやめました。理由は(5)と同様、ネイティブに99%削除されるからです。shareholders だけで意味が通じるのでしょうね。

日本語の「等」、カッコ書きは、そのまま英語にすると嫌がられます。本文では概要(本筋)のみを伝え、どうしても必要な詳細情報は脚注等に外出しする方が好まれます。

(7) 等

細かい話ですが、どうしても「etc」 を文中で使うときは「, etc.,」です。
Tennis, soccer, baseball, etc., are outdoor games.

The Elements of Style(英文ライティングの古典!)にも、
The abbreviations etc. and jr. are always preceded by a comma, and except at the end of a sentence, followed by one.
とあります。

(8) 法人税法施行令

法人税法は Corporate Tax Law (CTL) と書くことは第1回で述べましたが、
施行令 Enforcement Order
施行規則 Enforcement Regulation
基本通達 Basic Circular
と書いたりします。通達にはよく「circular」が使われます。覚えておくと便利です。

まだまだ続きます。

Sample translationは「正解」ではありません。ここに書かれていることは全て私見であり、誤訳が含まれている可能性があることを予めご了承ください。ご質問、ご意見等ありましたら遠慮なくコメントいただければ幸いです。本シリーズを通じていろいろな方と交流できることを心より願っております。

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