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本シリーズの目的は、専門的な会計税務の日本語文章を「正確に訳すためのこつやプロセス(リサーチの仕方、単語の選び方等)」を「文書化」し、多くの方とシェアすることです。私は長年、金融翻訳、特に会計税務の翻訳に携わってきました。米国公認会計士(US CPA)試験の全科目に合格しています。ただ、実務には携わってはおりません。また帰国子女でもなく、留学の経験もありません。
本シリーズの内容は国税庁の「外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて」です。
外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて
日本語原文
1. 事前照会の趣旨
当社は、外国法人である当社の親会社(以下「本件外国親会社」といいます。)が製造及び販売する製品(以下「本件製品」といいます。)の中間生産品(半製品)を製造し、本件外国親会社に向けて輸出している内国法人です。
今般、当社は、中間生産品の原材料(以下「本件原材料」といいます。)を本件外国親会社から無償で支給を受け、これを当社が輸入して国内の工場において加工作業(以下「本件加工作業」といいます。)を施すことにより中間生産品(以下「本件半製品」といいます。)に加工し、国内の工場において本件外国親会社に引き渡すこととしました。
当社は、外国法人である当社の親会社(以下「本件外国親会社」といいます。)が製造及び販売する製品(以下「本件製品」といいます。)の中間生産品(半製品)を製造し、本件外国親会社に向けて輸出している内国法人です。
今般、当社は、中間生産品の原材料(以下「本件原材料」といいます。)を本件外国親会社から無償で支給を受け、これを当社が輸入して国内の工場において加工作業(以下「本件加工作業」といいます。)を施すことにより中間生産品(以下「本件半製品」といいます。)に加工し、国内の工場において本件外国親会社に引き渡すこととしました。
これに伴い、国内の工場における本件加工作業の対価として、本件外国親会社から加工賃(以下「本件加工賃」といいます。)を受け取ることとしました。
この場合の消費税の取扱いについて、次のとおりとして差し支えないか照会いたします。
1 本件加工作業は、消費税法第7条《輸出免税等》の輸出免税の対象となる。
2 当社が本件原材料を輸入する際に課される消費税について、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の仕入税額控除の対象となる。
Sample translation
Treatment of fees for the manufacturing of finished products using raw materials imported free of charge for Japanese consumption tax purposes
1. Purpose of advance ruling
A Japanese company (hereinafter "Company") currently manufactures semi-finished products for its foreign parent company ("Parent Company") and exports these to the Parent Company, which then processes them into finished products ("Finished Products") to sell them to its customers. The Company and the Parent Company have agreed that, going forward, the Company will import raw materials ("Raw Materials") from the Parent Company free of charge, process them into semi-finished products ("Semi-Finished Products") and deliver these Semi-Finished Products to the Parent Company at the premises of a plant in Japan. The Company will receive fees for the processing work ("Processing Work") performed in the plant ("Fees").
The Company has the following two questions regarding the treatment of these transactions for Japanese consumption tax (JCT) purposes:
The Company has the following two questions regarding the treatment of these transactions for Japanese consumption tax (JCT) purposes:
1. Whether or not Processing Work is any of the export transactions defined in Article 7 of Japanese consumption tax law (JCTL) and therefore Fees are zero-rated.
2. Whether or not input JCT on the import of Raw Materials by the Company is creditable as provided in Article 30 of JCTL "Input JCT on purchases."
(1) 当社は~する内国法人です
論点は二つあります。まず、当社は we ではなく「the Company」とした方が明確です。we だと著者、you だと読者に誤解されることがあるからです。契約書等で明確に定義する時、コレポン等で自明の時以外、ビジネス文書では we や you は使わない方が安全です。
二つ目は、「当社は~する内国法人です」という日本語です。日本語だと普通ですが、このまま訳すと、「A company is a Japanese company which manufactures ~」となり、会社という言葉が2回出てきて、英語としてはシンプルではありません。そこで「ある内国法人(当社)は、~を製造しています」と日本語変換し、
A Japanese company (hereinafter "Company") currently manufactures ~.
としました。この辺りについては、中山裕木子氏の英語は3語で伝わります【どんどん話せる練習英文100】 を読むと参考になると思います。
(2) 対価
直訳に consideration という言葉がありますが、ここでは加工賃とあるので、fee を使いました。fee は、対価だけでなく、報酬、料金、手数料等、いろいろな場面で使うことができます。
fees for services サービス料金
fees for consultation コンサルティングフィー
directors' fees 役員報酬
fee と salary は区別します。salary は、日本でいうところの固定給(例:monthly salary(月給))というイメージです。
賞与等を含む、広い意味の「給与」、「年間報酬」を言いたいときには、compensation、remuneration を使うことが多く、私の場合は、損害賠償金(同じく compensation)が出てくる時を除き、compensation を使っています。例えば、役員給与は、directors' compensation となります。
(3) 輸出免税
課税はされるが免除されるという意味です。「exempt」ともいいますが、「zero-rated」も使います。このサイトに消費税の仕組みが英語で詳細に説明されています。ざっくり言うと以下のようになります。
不課税 out of scope
非課税 exempt
輸出免税 exempt / zero-rated
非課税と輸出免税が両方出てくるときは、紛らわしいので、輸出免税には zero-rated を使います。
それともう一つ。消費税はよくJCTと略されます。Japanese consumption tax の略です。
(4) 仕入税額控除の対象となる
消費税について書くときは付加価値税(value added tax(VAT))を参考にします。仕入は input、売上は output 。仕入税額は input JCT となります。
Input VAT is creditable. 仕入VATは控除できる。
これを消費税(JCT)に応用すると、
Input JCT is creditable. 仮払消費税は仕入税額控除が取れる。
となります。
input VATでググると、他にもたくさん例文が出て来ますので応用すると、「仕入税額控除が取れる」は以下のように言えることが分かります。
Input JCT credit is allowable.
Input JCT credit may be reclaimed.
Input JCT credit may be claimed.
Input JCT can be credited against output JCT.
いろいろありますが、いずれにせよ、仮払消費税は仕入れに係る消費税額なので「input JCT」、その一部または全額について取る仕入税額控除が input JCT credit(s) となります。仮受消費税は output VAT です。
ちなみに、仕入税額控除してもまだ仮払消費税が余る時は、還付金を受け取れますが、英語ではこの二つ(仕入税額控除と還付)を合わせて recover と言うときがあります。以下の例文のように、recover 一言で仕入税額控除と還付の両方を表せる便利な言葉です。
Companies can recover input VAT. 企業は仕入VATを回収することができる。(つまり、仕入VATを税額控除することができ、税額控除しきれないときは還付金を受け取ることができる。)
消費税でも、仕入税額控除と還付を合わせて「回収」と言えたら楽ですが、「消費税の回収」と言っているのは聞いたことがありません。
(5) 税額控除と控除(損金算入) tax credit vs. tax deduction
(税理士さんや会計士さんには釈迦に説法なので無視してください。)
税金の話で「控除」が出てきたら要注意です。「税額控除」と「控除」は違います。
「税額控除」は「納税額算定のために、認められた税額を税額から、差し引くこと」
「控除」は「課税所得額算定のために、認められた金額(例えば経費)を所得の額から差し引くこと」
です。100円の所得から20円を控除し、残額80円の課税所得額に20%の税率を掛けると16円。3円の税額控除が取れるとすると、16円から3円を差し引き、最終的に13円を納税する、というイメージです。
(4)で述べた通り、税額控除はtax credit なので、例えば「所得税額から外国税額を控除できる」と言いたい場合は、
Foreign tax credit is available against income tax.
Foreign tax credit is deducted from income tax.
Foreign tax credit may be offset against income tax.
他方、控除(つまり損金算入)には deductible という言葉がよく使われます。例えば、「事業経費は控除(損金算入)できる」は、
Business expenses are deductible.
といいます。日本語で一口に(税額)控除と言っても、英語では訳は違います。
次回に続きます。質問、コメント、お待ちしております!
(1) 当社は~する内国法人です
論点は二つあります。まず、当社は we ではなく「the Company」とした方が明確です。we だと著者、you だと読者に誤解されることがあるからです。契約書等で明確に定義する時、コレポン等で自明の時以外、ビジネス文書では we や you は使わない方が安全です。
二つ目は、「当社は~する内国法人です」という日本語です。日本語だと普通ですが、このまま訳すと、「A company is a Japanese company which manufactures ~」となり、会社という言葉が2回出てきて、英語としてはシンプルではありません。そこで「ある内国法人(当社)は、~を製造しています」と日本語変換し、
A Japanese company (hereinafter "Company") currently manufactures ~.
としました。この辺りについては、中山裕木子氏の英語は3語で伝わります【どんどん話せる練習英文100】 を読むと参考になると思います。
(2) 対価
直訳に consideration という言葉がありますが、ここでは加工賃とあるので、fee を使いました。fee は、対価だけでなく、報酬、料金、手数料等、いろいろな場面で使うことができます。
fees for services サービス料金
fees for consultation コンサルティングフィー
directors' fees 役員報酬
fee と salary は区別します。salary は、日本でいうところの固定給(例:monthly salary(月給))というイメージです。
賞与等を含む、広い意味の「給与」、「年間報酬」を言いたいときには、compensation、remuneration を使うことが多く、私の場合は、損害賠償金(同じく compensation)が出てくる時を除き、compensation を使っています。例えば、役員給与は、directors' compensation となります。
(3) 輸出免税
課税はされるが免除されるという意味です。「exempt」ともいいますが、「zero-rated」も使います。このサイトに消費税の仕組みが英語で詳細に説明されています。ざっくり言うと以下のようになります。
不課税 out of scope
非課税 exempt
輸出免税 exempt / zero-rated
非課税と輸出免税が両方出てくるときは、紛らわしいので、輸出免税には zero-rated を使います。
それともう一つ。消費税はよくJCTと略されます。Japanese consumption tax の略です。
(4) 仕入税額控除の対象となる
消費税について書くときは付加価値税(value added tax(VAT))を参考にします。仕入は input、売上は output 。仕入税額は input JCT となります。
Input VAT is creditable. 仕入VATは控除できる。
これを消費税(JCT)に応用すると、
Input JCT is creditable. 仮払消費税は仕入税額控除が取れる。
となります。
input VATでググると、他にもたくさん例文が出て来ますので応用すると、「仕入税額控除が取れる」は以下のように言えることが分かります。
Input JCT credit is allowable.
Input JCT credit may be reclaimed.
Input JCT credit may be claimed.
Input JCT can be credited against output JCT.
いろいろありますが、いずれにせよ、仮払消費税は仕入れに係る消費税額なので「input JCT」、その一部または全額について取る仕入税額控除が input JCT credit(s) となります。仮受消費税は output VAT です。
ちなみに、仕入税額控除してもまだ仮払消費税が余る時は、還付金を受け取れますが、英語ではこの二つ(仕入税額控除と還付)を合わせて recover と言うときがあります。以下の例文のように、recover 一言で仕入税額控除と還付の両方を表せる便利な言葉です。
Companies can recover input VAT. 企業は仕入VATを回収することができる。(つまり、仕入VATを税額控除することができ、税額控除しきれないときは還付金を受け取ることができる。)
消費税でも、仕入税額控除と還付を合わせて「回収」と言えたら楽ですが、「消費税の回収」と言っているのは聞いたことがありません。
(5) 税額控除と控除(損金算入) tax credit vs. tax deduction
(税理士さんや会計士さんには釈迦に説法なので無視してください。)
税金の話で「控除」が出てきたら要注意です。「税額控除」と「控除」は違います。
「税額控除」は「納税額算定のために、認められた税額を税額から、差し引くこと」
「控除」は「課税所得額算定のために、認められた金額(例えば経費)を所得の額から差し引くこと」
です。100円の所得から20円を控除し、残額80円の課税所得額に20%の税率を掛けると16円。3円の税額控除が取れるとすると、16円から3円を差し引き、最終的に13円を納税する、というイメージです。
(4)で述べた通り、税額控除はtax credit なので、例えば「所得税額から外国税額を控除できる」と言いたい場合は、
Foreign tax credit is available against income tax.
Foreign tax credit is deducted from income tax.
Foreign tax credit may be offset against income tax.
他方、控除(つまり損金算入)には deductible という言葉がよく使われます。例えば、「事業経費は控除(損金算入)できる」は、
Business expenses are deductible.
といいます。日本語で一口に(税額)控除と言っても、英語では訳は違います。
次回に続きます。質問、コメント、お待ちしております!
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