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本シリーズの目的は、専門的な会計税務の日本語文章を「正確に訳すためのこつやプロセス(リサーチの仕方、単語の選び方等)」を「文書化」し、多くの方とシェアすることです。私は長年、金融翻訳、特に会計税務の翻訳に携わってきました。米国公認会計士(US CPA)試験の全科目に合格しています。ただ、実務には携わってはおりません。また帰国子女でもなく、留学の経験もありません。
初回(第1回)から国税庁の事前照会「英国子会社がオランダ法人と行う合併の取扱いについて」を翻訳しています。今日は2回目です。
日本語原文
英国子会社がオランダ法人と行う合併の取扱いについて
当社(以下「A社」といいます。)は、英国法人B社の発行済株式の全てを保有しており、B社は、欧州における販売拠点として傘下に販売子会社を有しています。
英国は、2019年3月29日に欧州連合(EU)からの離脱(いわゆる「Brexit」)を予定しているため、A社はB社の現在の事業をオランダに移転することを予定しています。
このB社の事業の移転は、A社がオランダに新たに設立した100%子法人であるC社がB社を吸収合併することにより行います(以下「本件合併」といいます。)。
この場合、本件合併は、適格合併(法人税法第2条第12号の8)に該当するため、A社において配当等の額とみなす金額(以下「みなし配当の金額」といいます。)は生じず(法人税法第24条第1項第1号)、また、金銭等不交付合併(法人税法第61条の2第2項)に該当するため、A社においてB社株式の譲渡損益は繰り延べられると考えてよいでしょうか。
今日は第1回からの続きで、以下の文章についてお話していきます。
日本語原文
英国は、2019年3月29日に欧州連合(EU)からの離脱(いわゆる「Brexit」)を予定しているため、A社はB社の現在の事業をオランダに移転することを予定しています。
このB社の事業の移転は、A社がオランダに新たに設立した100%子法人であるC社がB社を吸収合併することにより行います(以下「本件合併」といいます。)。
米国式だと「March 29, 2019」、英国式だと「29 March 2019」となります。読み手の国に合わせます。
(2) 略語 欧州連合(EU)
EUは誰でも知っている言葉ですが、通常、英語で略語を使うときは、初出時に正式名称を書き、その後略称にするという方法を取ります。
The Ministry of Finance (hereinafter referred to as "MOF")
The Ministry of Finance (hereinafter "MOF")
The Ministry of Finance ("MOF")
上から下に行くにつれて正式度が減ります。ダブルクオーテーション("")は、ネイティブでもつける人、つけない人がいます。
「A、B及びCを総称してDと言う」と言う場合は、
A, B and C (hereinafter collectively referred to as D)
となります。
(3) いわゆる「Brexit」
日本語再掲
このB社の事業の移転は、A社がオランダに新たに設立した100%子法人であるC社がB社を吸収合併することにより行います(以下「本件合併」といいます。)。
(4) 用語の定義 移転、本件合併
(5) 用語の定義 the を付けるか 移転、本件合併
(4)に関連しますが、頭文字を大文字にして定義した「Transfer」と「Merger」を後で使うときに the を付けるか否か、という問題があります。今回のケースは付けた方がいいと思いますが、付けない方がいい場合(固有の取引ではなく、概念(例えば「ストックオプションの行使に係る株式」)を大文字定義した時等)もあります。今度またお話しします。
(6) 時間軸 設立した
日本語だけ見ると既に設立済みのように聞こえますが、図中の「現在」を見ると、まだC社は設立されていません。この質問が2019年3月29日よりも前にされていること、そして質問日現在、C社はまだ設立されていないということ等、時間軸をある程度理解して訳さないと、頓珍漢な英語になります。
続きは次のポストに掲載します。
Sample translationは「正解」ではありません。ここに書かれていることは全て私見であり、誤訳が含まれている可能性があることを予めご了承ください。ご質問、ご意見等ありましたら遠慮なくコメントいただければ幸いです。本シリーズを通じていろいろな方と交流できることを心より願っております。
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