2023-10-25

金融翻訳のこつ 仕入税額控除 No.6

KeiNarujima から移行しました。

本シリーズの目的は、専門的な会計税務の日本語文章を正確に訳すための様々なこつやプロセス(リサーチの仕方、単語の選び方等)を文書にまとめ、多くの方とシェアすることです。私は長年、金融翻訳、特に会計税務の翻訳に携わってきました。米国公認会計士(US CPA)試験の全科目に合格しています。ただ、実務には携わってはおりません。また帰国子女でもなく、留学の経験もありません。

第11回から国税庁の「外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて」を訳しています。


外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて

日本語原文

ロ 本件加工作業は輸出免税の対象となるか
 消費税法第7条第1項第5号及び消費税法施行令第17条《輸出取引等の範囲》第2項第7号は、国内において行われる課税資産の譲渡等のうち、非居住者に対して行われる役務の提供で、①国内に所在する資産に係る運送又は保管、②国内における飲食又は宿泊並びに③①及び②に掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの以外のものについては、消費税を免除する旨規定しています。
 そして、消費税法基本通達7-2-16《非居住者に対する役務の提供で免税とならないものの範囲》は、これら消費税が免除されるものから除かれる非居住者に対する役務の提供として、前述の①及び②のほか、国内に所在する不動産の管理や修理、建物の建築請負、電車・バス・タクシー等による旅客の輸送等を例示しています。
 本件外国親会社は、外国法人であり、国内に支店又は出張所その他の事務所を有する法人ではありませんので、消費税法施行令第1条《定義》第2項第2号に掲げる非居住者に該当します。
 また、本件加工作業は、非居住者である本件外国親会社に対して、本件外国親会社から支給される本件原材料を、国内の工場で本件半製品に加工するという役務の提供であり、前述の①又は②には該当しません。
 さらに、本件加工作業は、国内に所在する不動産の管理や修理等のように非居住者が国内において直接便益を享受するものとは認められないことから、前述の③にも該当しません。
 したがって、本件加工作業は、消費税法第7条第1項第5号及び消費税法施行令第17条第2項第7号に規定する国内において行われる課税資産の譲渡等のうち消費税が免除されるものに該当します。


Sample translation

B. Whether or not Processing Work is zero-rated as an export for JCT purposes

JCTL 7(1)(v) and JCTL Enforcement Order (hereinafter "JCTLEO") 17(2)(vii)* provide that services, except for the following, supplied in Japan to non-Japanese residents are zero-rated for JCT purposes:
(i) a transportation or warehousing of goods in Japan;
(ii) a food or accommodation service provided in Japan, and  
(iii) an equivalent service to (i) or (ii) whose benefit is directly derived in Japan.
* Article 17 "Definition of export transactions," Paragraph 2, Subparagraph 7 of JCTLEO

JCTL Basic Circular 7-2-16** excludes the following additional services from the zero-rated services:
(iv) a maintenance and repair of real property in Japan;
(v) a subcontracted construction service performed in Japan;
(vi) a passenger transportation service in Japan by train, bus, taxi and others.
** JCTL Basic Circular 7-2-16 "Services to non-residents excluded from zero-rated services"

As the Parent Company is a foreign corporation and has no branch or office in Japan, it is a non-resident as defined in JCTLEO 1(2)(ii)***.
*** Article 1 "Definition of terms," Paragraph 2, Subparagraph 2 of JCTLEO

However, Processing Work, i.e., the processing of Raw Materials into Semi-Finished Product in a factory in Japan for the non-resident Parent Company, is neither (i) nor (ii).

Also, Processing Work does not fall under the scope of (iii) either because, unlike a maintenance or repair of real property in Japan whose benefit is directly derived in Japan by the non-resident, no benefit from Processing Work is directly derived in Japan by the non-resident.

Therefore, Processing Work is zero-rated for JCT purposes under JCTL 7(1)(v) and JCTLEO 17(2)(vii).

(1) 輸出免税

消費税には、課税、不課税、非課税、免税、という言葉があります。英語では、

課税 taxable
不課税 outside the scope of JCT
非課税 non-taxable/exempt
免税 zero-rated

となり、下の定義に基づきます。

課税 国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と輸入取引
不課税 課税以外の取引
非課税 国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等であっても、課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課税しない取引(土地取引等)
免税 輸出取引

もう少し説明しますと、

「国内取引」は先ず、
 課税取引 消費税の課税対象となる
 不課税取引 そもそも消費税の課税対象外
 に区別され、

 「課税取引 消費税の課税対象となる」は
  課税取引 消費税の課税対象で消費税を課される
  非課税取引 消費税の課税対象だが諸般の事情で消費税を課されない(土地取引等)
  に区分され、更に、

  「課税取引 消費税の課税対象で消費税を課される」が
   課税取引 消費税の対象で消費税を課され、課される税率が0%ではない
   免税取引 消費税の対象で消費税を課されるが、税率が0%である
   に区分されるわけです。

つまり、日本の輸出「免税」とは「消費税の対象で消費税を課されるが、税率が0%の取引」で、だから「zero-rated」です。

この区分は、欧州の付加価値税(value added tax、いわゆるVAT)もほぼ同じです。

(2) AのうちのB

「AのうちのB」 よく目にしますが直訳はしないほうがいいと思います。

国内において行われる課税資産の譲渡等のうち、非居住者に対して行われる役務の提供

→「国内において行われる、非居住者への役務提供」と解釈し、

services..... supplied in Japan to non-Japanese residents

としました。

(3) 及び、並びに

釈迦に説法かもしれませんが、英語で書くときに「及び」と「並びに」は大事です。読み違えると誤訳する可能性があります。ということでまずは基本から。

従業員及び役員
従業員、役員及び社長

「並びに」は「及び」より一段上のまとまりを示すもので、

御社の従業員、役員及び社長、並びに弊社の従業員、役員及び社長

となります。ですから、「①国内に所在する資産に係る運送又は保管、②国内における飲食又は宿泊並びに③①及び②に掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの以外のもの」を整理して、箇条書きにすると「①、②並びに③」となり、

① 国内に所在する資産に係る運送又は保管、
② 国内における飲食又は宿泊、並びに
③ ①及び②に掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの以外のもの

英語だと、

(i) a transportation or warehousing of goods in Japan;
(ii) a food or accommodation service provided in Japan, and
(iii) an equivalent service to (i) or (ii) whose benefit is directly derived in Japan.

となります。「若しくは」と「又は」も同じ関係です。

(4) 箇条書き

「国内に所在する不動産の管理や修理、建物の建築請負、電車・バス・タクシー等による旅客の輸送等」

も整理して箇条書きにする必要があります。

国内に所在する
- 不動産の不動産の管理や修理、
- 建物の建築請負、
- 電車・バス・タクシー等による旅客の輸送等

なので箇条書きにしますが、この3つは「①、②、③」への追加の例なので、付番を④からにし、

(iv) a maintenance and repair of real property in Japan;
(v) a subcontracted construction service performed in Japan;
(vi) a passenger transportation service in Japan by train, bus, taxi and others.

としました。

(5) 係り

ちなみに(4)の「国内に所在する不動産の管理や修理、建物の建築請負、電車・バス・タクシー等による旅客の輸送等」の「国内に所在する」は、

- 不動産の管理や修理、
- 建物の建築請負、
- 電車・バス・タクシー等による旅客の輸送等

の全てに係ります。ですから、

国内に所在する不動産の管理や修理、
国内で行う建物の建築請負、
国内における電車・バス・タクシー等による旅客の輸送等

とし、英語も

(iv) a maintenance and repair of real property in Japan;
(v) a subcontracted construction service performed in Japan;
(vi) a passenger transportation service in Japan by train, bus, taxi and others.

としました。役務提供の場所は消費税課税にとって非常に重要です。

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