2023-10-25

金融翻訳のこつ 仕入税額控除 No.7

KeiNarujima から移行しました。

本シリーズの目的は、専門的な会計税務の日本語文章を「正確に訳すためのこつやプロセス(リサーチの仕方、単語の選び方等)」を「文書化」し、多くの方とシェアすることです。私は長年、金融翻訳、特に会計税務の翻訳に携わってきました。米国公認会計士(US CPA)試験の全科目に合格しています。ただ、実務には携わってはおりません。また帰国子女でもなく、留学の経験もありません。


日本語原文

(2) 輸入消費税の取扱い
 消費税法第30条第1項では、事業者が保税地域から引き取る課税貨物につき輸入申告書を提出した場合には、当該課税貨物を引き取った日等の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税貨物について課された輸入消費税額を控除する旨規定しています。
 当社は、本件外国親会社から無償で支給される本件原材料を輸入し、その際、当社が、本件原材料に係る輸入申告書を税関長に提出し、輸入消費税を納付します。
 したがって、当社は、同項の規定に基づき、本件原材料を引き取った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、本件原材料について課された輸入消費税額を控除することができます。

Sample translation

(2) Treatment of import JCT
JCTL 30(1) provides that import JCT on taxable goods is creditable from JCT on the tax basis for the taxable period in which the taxable goods are removed from a bonded warehouse if the enterprise files an import declaration form for these goods. 

The Company files an import declaration form for Raw Materials and pays the import JCT on these materials imported from the Parent Company free of charge. 

Therefore, under the provision, the Company may subtract the import JCT on Raw Materials from the JCT on the tax basis for the taxable period in which the Raw Materials are removed from the bonded warehouse.  

(1) ~について課された税

今さらですが、「~について課された税」という場合、on を使います。

You have to pay income tax on the profit you make.
I have to pay Japanese consumption tax on items I buy.

みたいな感じです。

(2) 仮払消費税、仮受消費税

今回は出てきていませんが、消費税について訳すときに避けて通れないのが、仮払消費税と仮受消費税です。

仮払消費税 input JCT
仮受消費税 output JCT

input JCT はインプット、つまり「こちらに入って来るもの」、つまり「購入」するときにかかる消費税で仮払消費税。output JCT はアウトプット、つまり「こちらから出すもの」、つまり「販売」にかかる消費税ということで output JCT となります。付加価値税(VAT)も同じです。

仕入税額控除は

JCT paid on purchases (input tax) is creditable against the VAT charged on sales (output tax).
購入に係る消費税(仮払消費税)は販売に係る消費税(仮受消費税)から控除することができる。

となります。VAT だと、仮払VATは「仕入VAT」、仮受VATは「売上VAT」とも言われますが、どちらも「input VAT」、「output VAT」の訳です。

(3) 当該課税貨物を引き取った日等の属する課税期間

日本語ではよく見かけるフレーズですが、これを

✖ the taxable period to which the date on which the taxable goods are removed belongs

とすると不自然です。

〇 the taxable period in which the taxable goods are removed

とすると語数が減りスッキリします。よく似た例に「~した日が含まれる月」というのがありますが、こちらも、例えば「当該資産購入した日が含まれる月」を

✖ the month which includes the date on which the asset was purchased

とすると不自然です。

〇 the month in which you purchased the asset

とするとスッキリします!

(4) 所得控除と税額控除

所得控除 tax deduction
それぞれの所得控除の要件に当てはまる場合には、各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引きます。所得税額は、その残りの金額を基礎として計算されます。

税額控除 tax credit
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するものです。

意味は分かっていても、英語まではご存じないこともいらっしゃるのではないかと思います。所得控除(tax deduction)と税額控除(tax credit)の違いは以下のように説明されています。

Tax credits directly reduce the amount of tax you owe..... Tax deductions, on the other hand, reduce how much of your income is subject to taxes... 
税額控除は課税額を直接減額することで、所得控除は課税所得の額を減らすことである。

似て非なるものなので、英語でも訳し分けが必要です。所得控除の時に使われる「deduction」は、deductible という形でもしょっちゅう出て来ます。

The issue is whether or not these expenses are deductible. 
問題はこれらの経費が控除できるか否かである。

この場合の「控除」は「所得控除」を意味し、「deductible」は「損金算入できる」ことを意味します。「non-deductible」は「損金算入できない」です。ただ、「損金算入」というのは税務上の概念ですので、会計と税務の両方の切り口から、控除の話をするときには、

These expenses are deductible for accounting purposes, but are not for tax purposes.
これらの費用は会計上は控除できるが、税務上は控除不可である(つまり損金算入できない)。

というように明確化する必要があります。


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