前回から、法律の条文を分かりやすい英語にする(翻訳ではありません)方法について書いています。題材は法人税法132条の2「組織再編成に係る行為又は計算の否認」です。「Substance over form(形式より実質)」という考えを示す非常に重要な条文です。(読みやすくするため、法令の項番等は省略し、適宜改行しています。)
第1回はこちらをどうぞ♪
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第1回で色分けした条文は以下の通りです。(色については下で説明しています。)
第四章 更正及び決定
(組織再編成に係る行為又は計算の否認)
第百三十二条の二 税務署長は、合併、分割、現物出資若しくは現物分配(略)又は株式交換等若しくは株式移転(以下この条において「合併等」という。)に係る次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には、合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、法人税の額から控除する金額の増加、第一号又は第二号に掲げる法人の株式(略)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、みなし配当金額(略)の減少その他の事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 合併等をした法人又は合併等により資産及び負債の移転を受けた法人
二 合併等により交付された株式を発行した法人(前号に掲げる法人を除く。)
三 前二号に掲げる法人の株主等である法人(前二号に掲げる法人を除く。)
(組織再編成に係る行為又は計算の否認)
第百三十二条の二 税務署長は、合併、分割、現物出資若しくは現物分配(略)又は株式交換等若しくは株式移転(以下この条において「合併等」という。)に係る次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には、合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、法人税の額から控除する金額の増加、第一号又は第二号に掲げる法人の株式(略)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、みなし配当金額(略)の減少その他の事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 合併等をした法人又は合併等により資産及び負債の移転を受けた法人
二 合併等により交付された株式を発行した法人(前号に掲げる法人を除く。)
三 前二号に掲げる法人の株主等である法人(前二号に掲げる法人を除く。)
英語は下です。
Chapter 4 - Correction of tax due by the tax authorities
132-2 Disallowance of acts or calculation related to group reorganization
The director of a tax office may recalculate the amount of corporate tax or the tax basis or the tax loss for corporate tax purposes of any of the companies listed below from 1. to 3. related to a merger, division, distribution/contribution in kind, share-for-share exchange or share transfer (hereinafter a "merger, etc.") if he or she determines that an act or calculation by the company, if allowed, would inappropriately reduce its corporate tax liability by:
- decreasing a gain or increasing a loss on assets and liabilities transferred through the merger, etc.;
- increasing corporate tax credits;
- decreasing a gain or increasing a loss on the transfer of shares in either of the companies in item 1 or item 2 below; or
- decreasing deemed dividends; or
- for another reason.
- Companies involved in, or receiving assets and liabilities through, the merger, etc.
- A company issuing the shares distributed in the merger, etc. (excluding the companies provided in the preceding item)
- Corporate shareholders of any of the companies provided in the preceding two items (excluding the companies provided in the preceding two items)
重要ポイントを挙げました。
1. グレー部分 - 結論
税務署長は、・・・法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、・・・の法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
(1) 必ず最初に書きます!日本語の順番は無視します。
(2) 重要な単語
- 課税標準 tax basis
- 欠損金 tax loss, net operating loss (NOL)
2. ピンク部分 - 法人税の説明
・・・合併、分割、現物出資若しくは現物分配(略)又は株式交換等若しくは株式移転(以下この条において「合併等」という。)に係る次に掲げる法人の法人税・・・
法人税を修飾する下線部分を英語にします。ポイントを以下に挙げました。
(1) 重要な用語
- 合併 merger
- 分割 division, split
- 現物出資 contribution in kind
- 現物分配 distribution in kind
- 株式交換 share-for-share exchange
- 株式移転 share transfer
(2) 「合併等」-「 等」の取り扱い
「等」が具体的に何を意味するか定義します。以下のような言い方をします。
- hereinafter "merger, etc." (以下、「合併等」という。)
- hereinafter collectively referred to as "merger, etc."(以下、「合併等」と総称する。)
「等」の取り扱い詳細については「等」の訳し方をどうぞ♪
3. 緑部分 - 法人税が減る理由
合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、法人税の額から控除する金額の増加、第一号又は第二号に掲げる法人の株式(略)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、みなし配当金額(略)の減少その他の事由により
以下のように箇条書きにするだけでぐっと読みやすくなります。
- 合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加
- 法人税の額から控除する金額の増加
- 第一号又は第二号に掲げる法人の株式(略)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加
- みなし配当金額(略)の減少
- その他の事由
(2) 係る
例文:a gain or loss on assets and liabilities
4. 残った部分
(1) 更正及び決定
更正と決定の違いについてはこちらをご覧ください。
(2) 「組織再編成に係る行為又は計算の否認」
例文:The finance cost is not allowed as an expense deductible from rental profits.
当該金融(財務)コストの賃貸所得からの費用控除は否認される(認容されない)。
(3) 仮定法 - 「これを容認した場合には」
実際には容認されないので仮定法を用います。
(4) 前二号
一号と二号の両方を指します。
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